京都は戦災を受けなかった関係で近代建築も多く残っている。その中で代表的なものは京都府庁の旧本館である。周囲の環境もよく、見学するのに値する建物である。重要文化財に指定されている。
京都府庁旧本館の建物について
京都が東京遷都から立ち直り、近代化を進めていた明治34年に京都府庁旧本館の建物は起工され、明治37年に完成している。
設計したのは京都生まれで東京帝国大学で西洋建築学を学んだ当時30歳前後の若い京都府技師であった松室重光である。設計に当たっては先に完成していた東京府庁舎や兵庫県庁舎が参考にされた。
建物はルネサンス様式の地上2階建、煉瓦造一部石造。正面と背面に車寄せがある。屋根は天然スレート葺で正面の一段高くなったところを中心として左右両翼に張り出している。
車寄せのある玄関まわりから受ける印象としては現在の他の県庁と比べると小ぶりであるが、建物は奥行きがあり中庭をもつロ字形となっている。南正面には公式行事や公賓の接遇等を行うための正庁、背面中央には府会議事堂、4つの角には知事室、議長室、参事会室、貴賓室が設置されている。全体としては急激に拡大する業務をこなすため大小55の室が設けられている。
建物内部の装飾は、随所に和風の優れた技術が取り入れられており、レトロで趣のある建物となっている。現在は旧知事室、旧食堂、正庁、旧議場が一般に公開されており、趣のある建物を活用して結婚式などのイベントにも使用されている。
中庭を設計したのは名門の作庭師七代目小川治兵衛であるが、西洋風の中庭であるため同じ小川治兵衛が作庭した平安神宮の中庭とは趣が異なる。ただ、しだれ桜が有名で桜のシーズンは見学者多い。
建物は現在も議場は府政情報センター、その他の部屋も人事委員会事務局等の執務室や会議室として使用されている。建設当時の姿をとどめる現役の官公庁建物としては日本最古のもので、重要文化財に指定されている。
明治維新以来、効率的な近代的行政庁舎がどのようなものか模索され続けてきたが、京都府庁旧本館はそれらの総決算的な建築であり、以後、大正期後半までは、県庁舎の模範となっている。
京都府庁旧本館の背面玄関。議場の出入口か。

京都府庁旧本館付近の地図
住 所:京都府京都市上京区藪之内町
京都市のど真ん中という位置にある。付近には、近畿農政局、京都地方検察庁それに刑事ドラマにも登場する京都府警察本部などが集まる官公庁街となっている。
同じ敷地内の京都府警察本部の建物。この建物もレトロ感はあり、なかなかのものである。なお、移転する文化庁がこのビルに入ると決まった。
